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専門家コラム・Q	& A

反社会的勢力を排除する!~定義を確認し、そのために必要な社内体制とは?|株式会社エス・ピー・ネットワーク

【第69回】 贈収賄リスクへの対応(コンプライアンス・プログラムのあり方)

3) テロ対策

以前も指摘した通り、日本は四方が海に囲まれていることから、主に「海(港)」と「空(空港)」における入国管理の強化がその対策のメインとなります。また、具体的な標的(ターゲット)としては、国の重要機関、原子力発電所(原発)、鉄道や主要な駅などのインフラ関連施設が考えられますが、当該施設に入り込む「内通者」の事前排除がテロ対策においては極めて重要なポイントとなります。この点については、残念ながら、昨年、原発作業員等の身元調査の法制化が見送られた経緯がありますが、最近になって、この「内通者」対策に一歩踏み込んだ議論が進んでいます。

▼ 原子力規制委員会 第5回核セキュリティに関する検討会

▼ 資料1 個人の信頼性確認制度の方向性について(案)

公表されている上記文書によれば、「関連会社従業員を含む従業者に対し、防護区域又は周辺防護区域(以下「防護区域等」という。)に入域すること、又は特定核燃料物質の防護に関する情報(以下「防護情報」という。)を取り扱うことをその施設等の管理権に基づき許可する場合に、確認対象者の申請に基づき、信頼性を確認した上で、防護区域等への単独での入域、又は防護情報の取扱いを許可する」ための信頼性確認制度の方向性として、例えば以下のような内容が検討されているようです(下線部は筆者)。

● 申請者の氏名、住所、生年月日等の人定事項、申請者の学歴、職歴及び賞罰の経歴申請者の法律上の責任能力、テロ組織等暴力的破壊活動を行うおそれのある団体や暴力団との関連等、限定した事項について、申請者に対して自己申告及び当該申告内容の一部についてはこれを証明する書類の提出を求めるとともに、申請者に面接考査及び適性検査を実施する

● 施設等の管理権に基づき、内部脅威者になるおそれがあるか否かを確認するために必要な個人情報を取得する

● 取得する個人情報については、原則自己申告によるものとし、一定の範囲でこれを客観的に裏付ける公的な証明書類の提出を求める

● 事業者は、取得した個人情報を確認するため、面接考査及び適性検査を実施する

本コラムとの関係で言えば、「テロ組織等暴力的破壊活動を行うおそれのある団体や暴力団との関連等、限定した事項について、申請者に対して自己申告及び当該申告内容の一部についてはこれを証明する書類の提出を求める」となっており、自己申告等をベースとしている点では、グローバルスタンダードから見ればまだまだ脆弱性を有していると指摘できます。また、「これを証明する書類の提出」が誓約書レベルのものなのか不明ですが、少なくとも、原子力発電事業者等が主体的に厳格な反社チェックやテロ等にかかる制裁リストによるスクリーニングを実施するといった取組みは行うべきです。

今後、多くの国際イベント開催が目白押しとなっている日本が、(好むと好まざるに関わらず)テロリストの格好のターゲットとなっている状況からみれば、グローバルスタンダードに準じた早急な制度設計と厳格な運用の開始が望まれます。

4) 入れ墨(タトゥー)問題

入れ墨(タトゥー)の問題については、これまでも本コラムで度々取り上げてきましたが、暴力団等の反社会的勢力を連想させる日本的な「入れ墨」概念とファッション的な意味合いの「タトゥー」概念との文化の違いに起因する摩擦が生じています。日本においては、「暴力団お断り」の文脈で「入れ墨お断り」が語られることが多いのですが(加えて、公衆浴場等における感染症対策の意味もあります)、海外からの観光客を排除する理由としては、それだけではやや合理性を欠いているのも事実でしょう。そのような中、観光庁が本件に関するアンケートを実施していますので、以下にご紹介いたします。

▼ 観光庁 入れ墨(タトゥー)がある方に対する入浴可否のアンケート結果について

まず、本アンケート結果によれば、入れ墨がある方に対する入浴について、「お断りをしている」施設が55.9%、「お断りしていない」施設が約30.6%という結果になっています。さらに注目すべきは、「シール等で隠す等の条件付きで許可している」という施設が約13%もあるという点です。有名リゾート施設運営会社がこのような運用を始めたことが大きく報道されたことが影響しているようにも思われます。

また、入れ墨がある方の入浴をお断りする経緯については、「風紀、衛生面により自主的に判断している」が58.6%、「業界、地元事業者での申し合わせ」が13.0%、「警察、自治体等の要請、指導によるもの」が9.3%といった結果になっています。

一方で、「入れ墨のある客の入浴を巡りトラブルが発生したことがある」のは18.6%ということですが、とりわけ、「一般客から入れ墨に関する苦情を受けたことがある」施設が47.2%あったという点は、入れ墨に対して一般の方々の関心が高いことの表れであり、大変興味深いデータです。

また、大阪市が職員に入れ墨の有無を確認する調査をしたことと、調査に答えなかった職員を懲戒処分にしたことは違法か、が争われた2件の訴訟の控訴審裁判についても進展がありました。

今回、大阪高裁は、ともに違法とした1審・大阪地裁判決を取り消し、調査も処分も適法と判断しています。まず、調査について、報道によれば、「市政への信頼が失墜しないよう、目に触れる場所に入れ墨がある職員を把握し、市民らと接触が多い部署を避けるなどの人事配置に生かす目的で、正当だった」と必要性を認め、「思想や信条、宗教についての個人情報とは認めにくく、人種、民族、犯罪歴についての個人情報でもない」ため「社会的に不当な差別を受ける恐れがある情報ではない」と判断したとされています。その結果、2人が回答を拒んだ事実について「職務上の義務に違反し、全体の奉仕者としてふさわしくない非行であり、職場の秩序を乱した」として、戒告処分は「裁量権の逸脱、乱用ではない」とも判断したと言うことです。

5) 犯罪インフラ化を巡る動向

① 不動産

先に紹介した空き家を悪用したネット通販詐欺事例のように、不動産が「犯罪インフラ化」している実態があり、特に、市町村レベルまで制定が拡がった暴排条例によって暴力団事務所の新設が難しくなっている中、不動産事業者が意図的に(あるいは「情を知って」)物件を仲介する事例も後を絶ちません。最近も、居住用に契約したマンションの一室を特定危険指定暴力団工藤会の関係者が使う事務所にしていたとして、詐欺容疑で自称無職の男を千葉県警が逮捕しています。

不動産からの暴排については、例えば、東京都暴排条例では、暴力団員が、自らが暴力団員であることを隠す目的であることを知りながら、自分の名義を利用することを許す「名義貸し」行為が禁止されています(第25条)し、特に不動産事業者については、「当該不動産を暴力団事務所の用に供し、又は第3者をして暴力団事務所の用に供させてはならないこと」を契約書に盛り込むこと(第19条)や、「自己が譲渡等の代理又は媒介をする不動産が暴力団事務所の用に供されることとなることの情を知って、当該不動産の譲渡等に係る代理又は媒介をしないよう努めるものとする」(第20条)と規定されています。

本事例については、契約上の措置とは別に、当該マンション付近で高級車や不審な人物の出入りが見かけられており、「情を知って」ではないにせよ、このような事実が明らかにになれば、より踏み込んだ物件の監視態勢(他の入居者や近隣からの通報の受付体制や巡回の実施など)が社会からは求められることになると認識し、今後のあり方を検討していく必要があるのではないでしょうか。つまり、暴排条例の規定レベルにとどまらず、不動産が暴力団事務所に利用されることは暴力団等の活動を助長する典型的な事例であって、一方で様々な犯罪を助長する「犯罪インフラ化」している実態が顕在化している以上、不動産事業者はより厳格な顧客管理が求められていると言えます。

② レンタル携帯電話

「犯罪インフラ化」という視点からは、直近では、本人確認をせずに携帯電話のSIMカードを貸し出したなどとして、携帯電話レンタル会社の実質経営者ら男7人が、携帯電話不正利用防止法違反容疑で逮捕されたという事例がありました。首都圏の16の代理店に供給した携帯電話1800回線以上が、特殊詐欺やヤミ金などに使われた可能性があるというもので、本事例に限らず、携帯電話レンタル事業の健全性については、典型的な「犯罪インフラ化」が進んでいると言わざるを得ません。なお、この携帯電話レンタル会社の実態については、警察庁による以下の資料に詳しく、あらためて紹介しておきます。

▼ 警察庁「平成26年上半期における主な生活経済事犯の検挙状況等について

本資料内にある携帯レンタル事業者に関する調査結果によれば、「本人確認の方法」「本人特定事項」等、携帯電話不正利用防止法で規定された記録すべき事項が全て記録されていたのは全体の3.1%に過ぎず、身分証明書の偽変造が認められたものは94.6%に上ること、真正な身分証明書のコピーが添付されていたのが全体の5.2%、連絡が実際についたものは1.0%という惨憺たる実態です。つまり、レンタル携帯電話のほぼ全てが犯罪のために利用されているとさえ言えるのです(これがビジネスとして成立していること自体問題があり、今後、規制や許認可のあり方を含め見直すことが急務だと思われます)。

③ 診療報酬審査

国民健康保険の審査をすり抜け、患者を治療したなどと偽って診療報酬を水増しして不正請求していたとして、指定暴力団住吉会系組長ら男女14人が逮捕されています。さらに、この事件においては、暴力団組員やお笑い芸人ら数百人が保険証を提供しており、少額の報酬目当てに「アルバイト感覚」でこの詐欺スキームに加担していた実態も明らかになりつつあります。医療費抑制が喫緊の課題とされる中、膨大な数の審査に忙殺されて不正を完全に見抜くのが難しいという(半ばあきらめにも似た)構造的な問題が以前から指摘されており、暴力団がその脆弱性を突いて、この事件だけで数億円単位の資金源にしていたことになります。そして、この事件は正に氷山の一角である可能性も否定できず、診療報酬審査が「犯罪インフラ化」しているのではないかと危惧されます。

このように、暴力団の資金源として「犯罪インフラ化」している実態が明らかとなった以上、厳格な審査システム(審査管理システム)の導入は、もはや待ったなしです。「同じような治療を短期間に繰り返すなど、全体を見れば不審な動きは見つかる。不正な入出金を自動的に監視している銀行のようなシステムの導入が必要だ」という捜査関係者の指摘(平成27年11月7日付産経新聞)は、正に正鵠を射たものと言えるでしょう。

 

株式会社エス・ピー・ネットワーク

総合研究室 主任研究員 芳賀  恒人 氏

警視庁・道府県警の出身者をはじめ、企業危機管理に伴う法務・労務・財務・広報等の専門家で構成されるクライシス・リスクマネジメント専門企業。

反社会的勢力の見極めから排除実務、企業不祥事等に伴う緊急対策支援に至る「直面する危機(クライシス)」対策等に数多くの実績を有し、実践から導かれた理論に基づき「潜在する危機(リスク)」の発現を未然防止するためのコンサルティングと人的支援を展開する。従来の枠に留まらない危機管理的視点からの実践的なコンプライアンス体制や内部統制システムの構築を多くの企業で手がける。会社法の改正等の経済界の流れを先取りした先駆的企業危機管理論には、上場企業や株式公開を目指す企業だけでなく、金融機関や監査法人からの支持も厚い。

筆者は、企業のリスク抽出・リスク分析ならびにビジネスコンプライアンスを中心とする内部統制システム構築を専門分野とするリスクアナリストとして、これまでに、企業の反社会的勢力排除の内部統制システム構築・運用支援コンサルティングや排除計画の策定・対応支援等の業務を多数手がけるほか、「SPNレポート~企業における反社会的勢力排除への取組み編」を取りまとめ、犯罪対策閣僚会議下の「暴力団取締り等総合対策ワーキングチーム」での報告をはじめとして、企業の反社会的勢力排除に向けた取組みに関する講演等を数多く行っている。

弁護士法人法律事務所オーセンス

 

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